本『釣りとイギリス人(飯田操著)』
東京神田で面白い本を見つけました。
「釣りとイギリス人」です。
イギリスにおいて、釣りが、「生活のための魚を獲る手段」→「遊びにする余裕が生まれ」→「娯楽・スポーツ」に至るまでの経過と社会的背景が、さまざまな書籍や文献を引用しながら、詳細に説明されています。
イギリスと言えば、フライフィッシング発祥の地ということで、餌釣りより、フライの方が格上に置かれていることや「釣り=紳士のスポーツ」というイメージがありますが、コース・フィッシング(サケ科以外の雑魚のエサ釣り)を大事にする考えもあることが分かりました。
また、魚を釣ることのみならず、魚釣りを通して、素晴らしい田園に囲まれた自然を大事しようとするイギリス人の姿勢も紹介されています。
現在、イギリスの河川では、資源保護を目的とした法律により、釣り場と魚が厳しく制限されているとのこと。
リバーキーパー(管理人)のいる限られた釣り場で、一定期間、限られた人が楽しむスポーツになっていて、多くの庶民が、自由に釣ることができない環境になっているそうで、これは、ちょっと行き過ぎではないかなーーと思いました(そこまで魚が減ってしまったということかもしれませんが・・・)。
日本の河川での釣りはどうでしょう。
釣りの歴史は古く、「自然と一体となった釣り」が続けられている中、海外からのフライ・フィッシングやルアー・フィッシングが加わり、さまざまなジャンルの釣りが共存している状態です。
規制については、漁業法や水産資源保護法に基づく、各都道府県の内水面漁業調整規則により、ヤスなどの漁法の制限が行われた上で、禁漁期間を除けば、だれでも年券を買って気軽に釣りを楽しむことができます。
もし、イギリスのアングラーが、栃木県に来たら、「自由に釣れる素晴らしいフィールドの存在」や「高品質なタックルが手に入る環境」から、イギリス以上の「釣りの天国」と感じるはずです。
また、極端な水産資源の枯渇の話を聞いていないので、全体を見れば、そこそこの水準で管理されていると思われます。
ただ、釣り人(遊漁者)の釣獲圧などにより、保護が必要な魚種(サクラマス、イトウなど)やフィールドが出てきているのも事実。
このようなところでは、将来を見据えて、イギリスを見習って、水産資源の保護を優先し、禁漁区域の設定などを含めた保護に、釣り人も協力することが求められているのではないでしょうか。
今後、日本(栃木)の釣りを、さらにより良いものとしていくために、イギリスの釣りに対する考え方や歴史は、とても参考になると思います。
興味のある方は、是非、読んでみてください。
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【タイトル】釣りとイギリス人
【著者】飯田操(いいだ みさお)
【出版】平凡社
【発行】1995年7月10日 初版発行
【定価】2400円(古書で購入)
【ISBN】ISBN4-582-47454-3 C0022 P2400E
【目次】
序章 釣りとイギリス文化
・釣りと文化
・釣りと自然
・釣りと想像力
第一章 娯楽としての釣りの芽生え~16世紀
・民衆的創造力のなかの釣り
・騙しと釣り
・心優しき釣り人
・釣りと幸運
・最初の釣りの本
・「鉤釣り小論」
・それ以前の釣りの本
・デニスン訳の釣りの教書
・娯楽としての釣りの始まり
・「釣魚術」
・「鉤と糸による魚獲りの本」
第二章 「釣魚大全」とその周辺~17世紀
・「釣魚大全」の誕生
・作者ウォルトン
・寄せ集めの「釣魚大全」
・「釣魚大全」のさまざまな要素
・「釣魚大全」のパストラルの意味
・「釣魚大全」のパラドックス
・ハズバンドリーとしての釣り
・娯楽としての釣り
・ウォルトン以後
第三章 スポーツとしての釣りの発展~18世紀
・18世紀の釣りの変化
・特権階級のスポーツとしての釣りの芽生え
・釣りの商業化の始まり
・釣りと自然のなかの遊び
・季節の実感
・ジョージックとパストラル
・田園趣味と自然観察
・自然と人工のパラドックス
第四章 産業革命と釣り~19世紀
・産業革命の影響
・ゲーム・フィッシングとコース・フィッシング
・拡大する釣り
・釣りの大衆化
・釣りの競技会
・釣りに対する非難
・福音主義の運動
・釣り師の自己弁護と反省
・釣りと法律
・キーパーとポーチャー
・消えることのないのどかな釣りの伝統
・釣りとノスタルジア
・自然破壊と汚染
第五章 野生への憧憬~20世紀
・自然を忘れる社会への危惧
・ポーチャーへの共感
・コース・フィッシング礼賛
・釣り文学の誕生
・真のスポーツへの問いかけ
・海への関心
・職業釣り師の登場と釣りの堕落
・新たな釣り禁止運動と釣りの弁護
・キャッチ・アンド・リリース
・キーパーの新たな使命
・自然との交感
終章 釣りとイギリス性
・社会の変化と釣り
・産業主義への決別
・再生への希望
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コメント
>mansurさん
いろいろな意見がありますが、私も、おじか・きぬ漁協の取組に注目していて、今後の活躍を期待している者の一人です。
他の漁協にも広がっていくといいんですけどねーー。
投稿: よっしー→mansurさん | 2010年8月19日 (木) 22時40分
ちょっと小難しすぎる話で、失礼しました
要は、楽しい釣りを、一緒に楽しむ人たちで、守りましょうということです
男鹿の取り組みがうまい方向にいけばいいですが…
紹介してもらった本は、どういう点で、
私の関心にひっかかるか、楽しみです
ところが肝心の釣りのほうはさっぱりです
秋口の最後のチャンス、川にいけるかな?
本業が忙しくなってきたので…
ではまた
投稿: mansur | 2010年8月19日 (木) 00時11分
「メリット還元」という言葉が、適切ではありませんでしたね(^_^;)。
釣りの場合、極端に珍しい魚種がいる訳ではないことなどもあって、「保護」や「管理」という概念が普及しずらい面があり(単純に放流量を多くすればOKとなりがち)、「過多の釣魚持ち帰り」などの問題を解決するのは時間がかかりますが、末永く多くの方が釣りを楽しんでいくために、「釣り人も、利害関係者として管理・運営に主体的に関わり、みんなで『釣り場&魚』を守り育てる」という姿を目指して、地道に取り組んでいくことが求められているのだと思います。
投稿: よっしー | 2010年8月18日 (水) 05時27分
メリット還元というよりは
メリットがもっと還元できるよう
川を通じて関係する当事者として,
釣り人ももっと深く関わるような
意識改革が必要だ
ということです
~してもらう,…払ったから,~のはずだ
は,単なる消費者,サービス受給者
そうではなく,
防災や水利利用で関わる地域住民
災害対策をする自治体
それ以外,川で楽しむ釣り人も,
利害関係者として,管理・運営に関わる
その代わり,
無関係には閉鎖的にはなる
それがギルド的な姿
つまり,
釣りのルールなどを守らない人物は,
排除してしまうということ
ギルドとは,万人のためではない
会員のみのための組織・団体
たとえば
自分の大切な愛車は
丁寧に扱うでしょ
他人がいじろうものなら
怒るでしょ
もしいたずらした人物がいたら,
二度と近づかせないでしょ
そう,川にたいして利害関係をもって
ということですね
それが広く醸成されれば,
過多の釣魚持ち帰り
ゴミ捨て,制限時間無視などをしなくなるはず
資本主義的路線で,
高額に年券を設定しても,
あまり意味ないのはみえていますから
もっと別な方法が必要だということです
ではまた
投稿: | 2010年8月17日 (火) 23時41分
>mansurさん
>利益団体としての性格を打ち出していこうとしないと,現在の日本の漁協の活性化,
>ひいては河川管理の改善にはつながらないようです。
遊漁者へのメリット還元をもっとしていく必要があるということですよね。
漁業権を設定したら、単純に放流するだけでなく、増殖することはもちろん、自然環境のみならず、ゾーニングや釣り人のマナーやルールづくりなどの環境づくりの取組ももっと行うことが求められているのだと思います。
いろいろと御苦労されているとは思いますが、漁協さんには、これからもどんどん新しい取組をしていただいて、活躍してもらいたいものです。
投稿: よっしー→mansurさん | 2010年8月17日 (火) 21時30分
また読み応えありそうな本を教えてもらいました.
日本でいう河川での釣りを管理する漁協は,ヨーロッパの場合は,世界史などでならった「ギルド」としての性格が強いようです.
そのため「万人のため…」ではなく,メンバーシップをもった会員の利益を優先する,ということになるようです.
ちゃんと調べたわけではないんですが,西園寺公一『新編 釣魚迷』の,ヨーロッパでの釣りのシーンから,想像できました(→よっしーさんに推薦してもらったんだっけ?)
地域社会,釣りという趣味,川を通して自然とかかわる趣味,災害対策…などの広い共通項によって,利益団体としての性格を打ち出していこうとしないと,現在の日本の漁協の活性化,ひいては河川管理の改善にはつながらないようです
ではまた.
ちなみに,先週都合があって,南福島というか,北茨城にでかけたんですが,標高が低くて渓流はだめでした.
日光周辺の恵まれた環境を再認識した次第です
投稿: mansur | 2010年8月16日 (月) 22時06分